スクールバス導入ってどこまで進んでいるの?
5月 21st, 2006
またやりきれない事件が発生。
外に出したら子どもが生きて帰ってくるかどうか…なんて信じられない世の中(Day By Day | 信じられない)。
そんな思いでいっぱいです。亡くなられた児童のご冥福をお祈りします。
こうした事件がおきると出てくるのが、子供の登下校の安全確保についての議論。地域でのパトロール、集団登下校とあわせて、下校時の学童の安全はスクールバスを考慮すればいいのでは(極東ブログ)という意見が聞こえてきます。猪口少子化相も閣議後の記者会見で子どもの安全対策のためのスクールバス導入の必要性を改めて強調(朝日新聞)しています。このスクールバスの導入ってどこまで対応が進んでいるのか?そう思って調べてみると、いろいろと知らなかったことや問題点が見えてきました。
スクールバスの導入によるこどもの安全確保。この問題は学校だけで考えていてはダメ。地域社会、コミュニティの問題、そしてそれを実現するための仕組みづくりの問題として考える必要がありそうです。
登下校時の安全確保等のための対策
昨年末に発表された「犯罪から子どもを守るための対策」(平成17年12月20日) 関係省庁間の連絡調整を図るために設置された関係省庁連絡会議が取りまとめています。
○ 全通学路の緊急安全点検
全ての小学校区において、学校、保護者・児童、警察、自治体等の関係者により、平成18年3月までに、全学校区・全通学路の安全点検を要請し、安全マップ作成や地域における対策に活用。
○ 全ての学校における防犯教室の緊急開催
全ての学校の全児童生徒が、平成18年3月までに、学校と警察との連携等による実践的な「防犯教室」を受講できるよう、開催を要請。
○ 全ての地域における情報共有体制の緊急立ち上げ
全ての地域において、警察が学校、保護者、地域住民等と連携し、不審者情報が潜在化することがないよう共有化のためのネットワークを平成18年3月までに構築。
○ 学校安全ボランティア(スクールガード)の充実
全ての小学校区において、平成18年3月までに、地域社会全体で通学路の安全を含む学校安全体制が整備されるよう、学校安全ボランティアへの参加を広く呼びかけ。
○ 路線バスを活用した通学時の安全確保
全国で地域の路線バスをスクールバスとして活用する方策を早急に検討し、対応が整った地域から順次導入できるよう環境整備を図る。
○ 国民に対する協力の呼びかけ
家庭、学校、民間団体等全ての関係者の地域における防犯意識を高め、子どもの安全確保の取組への積極的な参加を促す。
平成17年12月20日 犯罪から子どもを守るための対策
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo/kettei/051220taisaku.pdf
この政府取りまとめの緊急対策の中で取り上げられた路線バスを活用した通学時の安全確保。その後、文部科学省にて路線バス等をスクールバスとして活用するための基本的な考え方と具体的な取組方策について取りまとめてされています。
登下校時における児童生徒の安全確保のための路線バス等の活用について(通知)-文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050822.htm
これを読んで気になったのが、なんで路線バスをスクールバスに仕立て上げなきゃいけないんだろうってこと。自治体がマイクロバスでも走らせればいいじゃんって。それに警察庁、総務省及び国土交通省にそれぞれ同様の通知を行っていること。ん?やっぱりいろいろ監督省庁のしばりってあるのかな?
スクールバスって?
さてスクールバスって何なんでしょう?幼稚園の園バスが身近なんで思い出しますが、そういえば実家の田舎のほうでは小学校向けにスクールバス走っていたな。
つまり議論の始めの段階で、学校まで数分の都市部と距離のある地方(過疎部)に分ける必要がありそう。与党や政府内には「徒歩数分で登校できる都市で果たしてバスが必要か」なんていう消極的な声もあるそうだし。
そこでスクールバスでニュースを検索すると、通学時の安全確保対策以外によく見つかるのが、少子化進行や市町村合併にともなう小中学校の統廃合にともなう子供の足確保としてのスクールバスのニュース。(Google 検索: スクールバス)
そこで知ったのが、過疎地のスクールバス導入については僻地(へきち)教育振興法に基づいて国の補助があるということ。小学校で4Km以上、中学校では6Km以上の通学距離がある場合に自治体がスクールバスを購入すると費用の2分の1を補助する制度。ただし裏を返せば、それ未満の生徒たちは使うことはできないし、金額の上限つき。
文部科学省によると、スクールバスは昨年5月現在、全国の954市町村で3333台が導入されている。大半は、学校の統廃合などに伴って長距離通学をすることになった子どもの足を確保するためだ。バスの購入費は、定員数にもよるが1台500万円前後という。
バス1台を新規購入する場合、国庫補助(2分の1)は304万円を上限にしている。しかし、へき地校の指定や、公共交通機関の路線廃止などの厳しい要件がある。市街地の学校でバスを購入するには、自治体の自主財源を使うほかに手はない。文科省幹部は「国の補助金が削減されていく中で、安全のためのバスで新たな補助事業を設けるのは難しい」と話す。多くの自治体も、多額の経費がかかるため消極的だ。
asahi.com: 通学バス導入、独自策 徒歩圏内、国の補助外 – 「子どもを守る」
http://www.asahi.com/special/children/TKY200512190226.html
これを読む限り、簡単には導入できないんだな。それにバスを購入するだけじゃなくて、運転手や運行維持にかかる費用だって必要だし。(運行費用の交付税措置もあるみたいですが。。。)それに公共交通機関があれば導入できないってことだ。路線バスが走っていればそれに乗れ!ってことですね。
ただこうした路線バスって赤字路線。朝夕だけの1日2便とかだったりして子供の通学には使いにくい代物なんだろう。スクールバスは無料で利用できるのですが、いわゆる「路線バス」を活用しているので、住んでいる地区によっては時間帯が合わず利用できないという状態(どうなの?@読者の声ネット版 )なんて声もありました。
そうはいっても国会質問では、へき地教育振興法に基づくこのスクールバスの遠隔地の通学支援に対して、このバスの路線の中で遠距離にとらわれずに学校近傍の路線内の児童もピックアップしながら学校に来ることも当面考えていただきたい(国務大臣:"予算委員会 質疑応答" 蓮舫)ってのもあり、少しは弾力運用はじまっているのかな?
スクールバスの成功事例 1
スクールバスを使った子供の安全確保事例が文部科学省によってまとめらています。スクールバスに限らず、いろいろ興味引かれる取組み事例がいっぱいです。(登下校時の安全確保に関する取組事例集)
スクールバスの成功事例として有名なのは新潟県加茂市の事例。子供の安全のためにバスを24台運行。市内の11校全児童の約3割が利用。へき地教育振興法対象外の小学校4キロ以内、中学校6キロ以内であっても、人家がとぎれる地域、人通りの少ない地域に対象を広げて運行。そのためにバスの購入費用は自治体持ち。
それでも市長は子供の安全のために最優先で予算化。少子化の時代にあって、子どもたちは宝の中の宝です。子どもの登下校の安全について市は、最優先で予算を投入しました。子どもの安全を確保するためには、どうすればよいのかを検討した結果、「実効性あるのはスクールバス」という結論になりました(新潟県加茂市の小池清彦市長の話)
年間維持費は約620万円。地方交付税で約580万円をまかなえるとのこと。できるじゃん!
スクールバスの成功事例 2
今度はスクールバスをやめちゃった事例(岡山県久米南町)。というか、町民バスとスクールバスをいっしょにして効率運用!
ここでもへき地教育振興法の距離制限のため、いくら人気のない山間部を歩いていても乗車できない児童がいたみたい。費用も年間1,680万円(平成16年)かかるし、子供が少なくなって座席に余裕もあり、高齢化すすむ沿線住民も乗りたいとの声。それで町民バスとして再出発。これまで利用できなかった中学生も利用できるようになったし、フリー乗降なので家の近くで乗降可。地域の大人もいっしょに乗るので大人の目も期待できる。
これ、いいじゃん。学校利用のスクールバスにこだわらず、効率化を図った事例。よく考えてみると他にもいっしょにできそうなものありそうだな。
そこで次の記事。
スクールバスの成功事例 3
兵庫・旧養父町の事例。小学校のスクールバス2台と福祉バス1台の統合を実現することで、安全と福祉の一石二鳥を実現。それまで週原則6往復の福祉バスが、平日毎日運行で週18往復に改善。年間維持費も約130万円の節約に。(asahi.com: 通学バス導入、独自策 徒歩圏内、国の補助外 – 「子どもを守る」)提案したのは新田保次・大阪大学大学院教授(都市・地域計画)。元の論文?はこちら(http://www.civil.eng.osaka-u.ac.jp/plan/staff/inoi/toko2003.pdf)
ここで福祉バスって?あと他にも統合できそうなのってない?って思ってググって見つけたページ。広島文教女子大学 菅井直也教授の講演録。(例会講演録17;過疎バス 知恵くらべ:路面電車を考える館)
過疎地でも走っているバスはこんなにある。結構時間帯も重なるし、それに二重の維持費も、社会的コストもかかってる。
- 国土交通省管轄の路線バス
- 文部科学省補助のスクールバス
- 厚生労働省補助の通院バス
- 総務省管轄の地方公共団体が出す身障者用やデイケア用の福祉バス
- 警察庁管轄?の企業・病院・学校等の送迎バス といろいろ。
ここで気づいたのは、 各監督省庁のタテワリズム。統一は難しそう。でも一連の事件をきっかけに横の連携もすすみそう。上手くすすめば、これは都市部の送迎バスも十分活用できそうだな。
スクールバス導入がすすめば、こんないいいことが?!
ここからは勝手な思い込み。幼稚園バスに乗っていくお姫さまのお話を聞いて思いつき。スクールバス導入するとこんないいことがあるかも。
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時間を守る。
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他の人に迷惑をかけてはいけないことを学ぶ。
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あいさつの大切さがわかる。
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交通ルール。
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交通機関内でのマナー。
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地域の目、大人の目。
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魔の8時間の軽減
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そして子供の安全。
まとめ?!
地域のボランティアに頼る、子供見守り活動も大切。でも何もかも地域のボランティア任せでは、できることにも限界がある(日々是口実 an excuse a day : 本日の言い訳:弱いんだから守ってよ!)わけだし、事件の直後だけ思い出したように「見守り運動」とか「声かけ運動」とかやって、いつの間にかすたれて行き、また、思い出した頃に事件が起こるというパターンの繰り返し(Re: 【奈良女児誘拐殺人】から考える (No.11))になっては元も子もない。やっぱり物理的に安全確保できるスクールバスも同時に導入しようよ。いや、コミュニティバスって感じでさ。
もちろんスクールバスを単純に導入しよう!っていっても、自宅からバス停までの安全性はこれまでと変わらない(JAPAN PENGUIN WEEKLY:政府、スクールバス導入を検討…登下校時の安全確保で)って思います。先の成功事例をみてもやはりその点が課題。なので加茂市では、バス到着時刻の周知徹底とかその到着時刻にあわせたボランティアであるスクールガード連携による安全確保をしているようです。地域のしくみも大切。
マイカーも便利だけど、どんどん高齢化がすすんでく日本。もっと強制的に人と人が集まる仕組みも必要かな。そういう意味でも子供が存在する学校、および人が集まる箱としての学校と公共交通機関って地域を結びつける核になるはずだなって思う。子供の安全が守られる社会って、ぜったいみんなが住みよい社会のはず。
・・・だいぶわけわからなくまとまらなくなってきました。本当、子供の安全って実は深いなぁ。
確かに命はお金には替えられません(コースケの独り言:スクールバス )。 治安と教育にはお金を惜しまない国(たじま 要(民主党千葉一区) 「今の日本を放っておけない!」BLOG:青少年特別委員会(日記12月20日):たじま 要 )への舵取りを期待しつつ、市民一人ひとりの努力も考えていかなけりゃいけないな。
長々と失礼しました。以上、このエントリがスクールバスについて気になっている方の参考になれば幸いです。
割れ窓理論による犯罪防止―コミュニティの安全をどう確保するか
小学校にスクールバスの運行の導入を考える時期なのではないでしょうか?
また起きてしまった・・・・・。もう小さな命が犠牲になる事件は、起きてはならないと
トラックバック、ありがとうございます。
一刻も早く、犯人が逮捕されることを祈るばかりですね。
スクールバスの件
米山豪憲くんの事件のあと,『お願いです』というエントリーを書いた.あのときは,た
コメントおよびTBありがとうございました。安全への意識が一過性のものにならないように、そしてそのためにもしくみとして動けるようにしていきたいなぁと思います。